吉田成研究室  |東京工芸大学芸術学部写真学科|

写真表現・写真史・画像保存を研究する吉田成研究室。

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写真の保存・修復の基本理念
写真の保護と修復を考える上で重要なことの一つとして、「した方が良いこと」と「しない方が良いこと」を理解しておくことが挙げられます。写真の保存・修復に関する先進国アメリカにおいて、かつてのフォトグラフィック・コンサヴェター(写真の保存・修復・管理に関する専門家)の主な仕事は、劣化した写真を“化学的に修復”することにあったと聞いています。しかし、さまざまな経験を積むうちに、こうした化学処理が、一時的に劣化した写真を甦らせることができても、後に取り返しのつかないダメージを与える場合もあることが確認されました。そのような経験から、現在では劣化した写真を化学的に修復するよりも、“物理的に保護”するという考え方が主流になってきています。写真の保存の研究は、まだ始められてから日が浅く、現在も開発途上であることを知っておく必要があると思います。
また何かの処理をする場合、元の状態に戻すことができる処理をするということも、写真の保存・修復を考える上で重要です。というのは、不適切な修復が行われたために、後になって処理を施した部分の劣化が進むことがあるからです。また、修復によって新たに加えられた材料が、写真の劣化の速度を促進させることもあります。さらに場合によっては、修復したことが損傷の原因にさえなることがあるのです。このようなことを発見した時に、処理前の状態に容易に戻せることが重要です。そのためには、修復する前の状態に復元が可能な材料・方法を採用する必要があるのです。こうしたことを踏まえて、写真の保存・修復の基本理念をまとめると次のようになります。

○被修復物について十分な知識を持っていること
○被修復物の修復に関する可否が判断できること
○修復後にいつでも修復前の状態に戻せる修復方法を採ること
○修復後についても責任が持てること

以上のように写真の保存・修復を考える場合には、写真の歴史的・文化的・芸術的価値等を十分に認識し、方法を考え、慎重に、そして敬意を持って接する必要があります。
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